
仁平勝 (著)
出版社 ふらんす堂
自句自解の本はいろいろありますが、通常は俳句の背景が解説されているだけですが
この本は俳句の作り方や、ひとつの俳句でその言葉の選んだ背景なども書かれていて、とても勉強になります
作品だけを読む
解説を読んで背景を思い浮かべながら作品を読む
あとがきの句作の方法論はどを読みながら作品を読む
というように色々な読みかたができて、1冊で3冊の本を読んでいる楽しさがありました
俳句をやられている人はわかると思いますが、散文で使うと誤用になりかねない上五の助詞の「の」
この効果についても言及されています
いままで何百冊と教本は読みましたが、この「の」について言及している本はあっても、具体的な説明はないんですよね
初めて「の」の効果を言語化して説明している本を読みました
勉強になるので読んでみてください
一般に出ている俳句の教本よりはるかに勉強になると思います
本の中で印象深かった俳句を引用させていただきます
いまに手放す風船を持ち歩く
「いまに」が良いです。ぱっと言葉を入れるとしたら「いつか」などを、置いてしまいそうですが、ここはどう考えても「いまに」しかないです
普通の言葉で、簡単に出るように見えますが、簡単には出てこない言葉だと思います
「いつか」ではなくて「いまに」であることで、そうするまでの時間が短くなります
結果的に、いままさに手放すことはできても、もう少し持っていようか、という心の揺れ動きも浮かび上がります
この句を読んだとき
風船をいま自分の周りにある大切な物や人、と見ているような感覚にもなりました
「いまに手放すことになってしまうかもしれない周りの大切な物や人。だからこそ、いまの一瞬をより大切に過ごしたい」と
そして、一番最後に手放す風船は、まさに自分の体だというようにも感じられました
「最後に手放すことになるだろう自分の体。だからこそ、いまの一瞬を誰よりもそばで歩いていきたい」と
自解では風船を読んでいると書かれていました
おそらくその通りだと思いますが、俳句を読むときに鑑賞者はそれぞれの解釈で読むことができます
よい俳句は鑑賞者の想像を広げてくれます
本書に収録されている俳句は、想像の広がる俳句がとても多くありました
純粋に作品としても、俳句作りの教本としても良い本です