091 俳句での比喩(ひゆ)の表現方法、例句


俳句で使われる比喩の表現方法と注意点、比喩俳句の作り方をまとめています

 

■比喩ってなに?

■俳句で使われる比喩と例句

■俳句で比喩を使う時の注意点

■俳句では比喩を使わない方がいいの?

■俳句に比喩を入れない人もいる

■面白い比喩はどうすればできるのか

■最後に

 






■比喩ってなに?


まず、比喩とはどういう意味かを理解しておきましょう
辞書で調べてみると
比喩とは①「説明や記述をわかりやすくし」②「類似した例や形容で表現」すること、と書かれています


①の「説明や記述をわかりやすくする」というのは、例えば
銀行はいわゆる貯水槽のようなものだ、なぜなら・・・
というように、銀行を知らない人に分かりやすく説明するために
別のものを提示して説明をします


②の「類似した例や形容で表現」することというのは
あの先生はゴリラのようだ
この雨は涙のようだ
というように、類似したものを提示して、「○○のようだ」「○○みたいだ」
というように表現します





■俳句で使われる比喩と例句


俳句で使われる比喩は、上記の「○○のようだ」「○○みたいだ」というように表現する比喩で、直喩(明喩)と呼ばれます
(※実際の俳句では、「ごとし・ように・似て・たとえば・ほど・ばかり・めき」などの言葉が使われる)

(例句)
身をよぢる如(ごと)くに束ねられ紫苑
冬浜に浪のかけらのごとき

ちなみに、似たような比喩で、よく俳句で使用されるものがあります
隠喩(暗喩)と呼ばれる比喩ですが
隠喩(暗喩)は「ようだ」「みたいだ」などの言葉を省略し、「AはB」だと断定します


(例句)
冬晴れの微塵となりし母の愚痴
春水にあばたの鐘を撞き鳴らす



直喩と隠喩の違いを述べましたが、直喩は説明的な感じを受けるのに対し、隠喩は創造的といえるのではないでしょうか






■俳句で比喩を使う時の注意点


①直喩(明喩)は
ある対象について表現する際、「○○のようだ」「○○みたいだ」などの語を使って表現する方法

②隠喩(暗喩)は
「○○のような」などの語を用いず、「AはB」だと断定して表現する方法
だと説明しました



これらの比喩を俳句で使う際の注意点があります


①直喩(明喩)を使う時の注意
直喩は、ともすると説明的な句になってしまうことがあります
俳句は詩であり、説明ではありませんので、直喩を使う時には”説明的になっていないか”気を付けなければいけません

また、直喩は大抵誰もが思うようなことばかりを言ってしまいがちです
雨であれば、「涙のような雨」
虹であれば、「橋のような虹」
雲であれば、「綿飴のような雲」
このような比喩を言ってみたところで、読者は共感も感動もしません

直喩は、誰も言ったことのない、初めての例えを出し、皆が「なるほど」と思わなければいけません
誰も言ったことのない、初めての比喩ということですから、皆が納得するかというと、それは考えただけで困難なことが分かりますよね
直喩を使った句の成功確率は1/100とも言われるほど、ハードルの高い技術なのです




②隠喩(暗喩)を使う時の注意
隠喩の特徴である、「AはB」という断定を安易に使うと、読者に意味が伝わらないばかりか、一句の品位を落とすことにも繋がります
読者が共感し、想像力を刺激してくれる隠喩を作ることが重要です







■俳句では比喩を使わない方がいいの?


ここまでの説明を聞くと、俳句では比喩を使わない方がいいのかな?と思ってしまいますが、そんなことはありません
比喩を使った素晴らしい俳句は沢山あります

比喩の俳句が成功すると、読者に対してとても強い印象を植え付けることができます

難しくて、皆が手を出さない表現方法ではありますが、それ故に新境地が眠っているのではないでしょうか
果敢に挑戦して、他の人には作ることのできない、あなただけの比喩俳句を目指すことも良いかもしれません

与謝蕪村や山口誓子も、比喩の俳句を沢山作っているのです






■俳句に比喩を入れない人もいる



俳句に比喩を全く入れない人もいます

俳句に比喩は合わない
比喩を使うと説明的になる
比喩は結局、主観にすぎないから
頭の中で機知的に考えたように見えるから
などの理由があるようです

物を見たまま俳句にする「写生派」の俳人も、比喩はあまり使用しません
見たままをそのまま句にするのですから、当然と言えば当然です

ただ、このような人たちが周りにいても
自分が使いたいと思ったのなら、私は、どんどん使うべきだと思います

人の考えや意見を第一にして、あなたは俳句を作っている訳ではないはずです








■面白い比喩はどうすればできるのか


人が思いつかない比喩を簡単に作ることは出来るでしょうか?

これは難しいのですが、一つの方法として
例えば「雲」の比喩を作るときに、まずは雲から連想される単語を5つ挙げます
次に、今あげた単語から連想される単語をそれぞれ5つ挙げます
合計25個の単語が出ます
その中から一番「新鮮で比喩になりそうな単語を選ぶ」という方法があります
雲から連想される最初の5つの単語は、誰もが思いつく単語になる可能性があります
その単語から連想される単語は、雲に近くも遠くもない単語になることが多いので
当たり前でなく、まったく理解されないでもない、ちょうどよい比喩が生まれやすいと言えます

25個も考えられない、という人は、こちらの「連想類語辞典」サイトを使ってみてはどうでしょうか?

連想語が一瞬にして表示されますので、その単語の中から、一番良いものをピックアップしても良いかもしれません


「連想類語辞典」




■最後に


俳句で比喩を使うと、時には思わぬ意外性や、飛躍に富んだ句が生まれます
比喩に対する批判的な意見はありますが
俳句の世界から比喩が消えたなら、俳句は実につまらないものだと思います
比喩に少しでも興味のある方は、果敢に挑戦して
新しい風を俳句界に吹き込んでいただければ、と思います