季語の、「夏を追う」の意味が「夏の果」と同じ?

 

夏の終わりを意味する「夏の果」という季語があります

この関連季語として「夏を追う」が紹介されていますが 

紹介する本はどれもその意味を書いていません 1.2.3.4.5

 

なぜ、夏の終わりを「夏を追う」というのでしょうか?

「追う」は追い払うや追い立てるなどの意味があります

夏を追い払う、夏を追い立てる、という言い替えをしても、それが「夏の果」と同じ意味だというには無理があります


一般的に「夏を追う」という表現は、甲子園の~、被災地の~などのように使われます

そこには、「夏の果」という意味はありません

 

「夏を追う」という言葉を使った一文を見つけたので下に紹介しますが

こちらも「夏の果」という意味では使われていません

 

「蝙蝠の背脊(せなか)に乘り夏を追ふて最(い)とも楽しく私は飛ばん」 6

 

「見よ冬は夏を追ふて忽ち(たちまち)に到るにあらずや」 7

 

「麦わら帽子かるく置きたる草の上去りゆく夏を追ふ思ひあり」という和歌 8

 

 

「夏を追う」を掲載する歳時記で最も古いのは、200年近く前の「四季名寄」です

このころの歳時記は、先に挙げた文章や和歌の表現を切り取って季語にしていることがあります

「去りゆく夏を追ふ思ひあり」の「夏を追ふ」だけを切り取るように

「去りゆく夏を追ふ思ひあり」は、一文を通して読めば「夏が終わる」という意味が分かりますが、一部分の「夏を追ふ」だけを切り取っても意味は通じません

 

実際に、このようにして文を切り取って季語にしたのかは分かりませんが

言葉の意味が分からないので、そのようにして季語にしたのかな?とは思ってしまいます

「夏を追う」を使う場合は、このあたりのことも確認をしてから使ったほうがよいと感じます

 

 

 

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1)角川書店.(2022).新版角川俳句大歳時記.KADOKAWA.

2)日外アソシエーツ.(2015).俳句季語よみかた辞典.日外アソシエーツ.

3)無適庵.俳諧道しるべ.2編前編.(1897).東京図書出版合資会社.

4)高井/蘭山.俳諧季寄/四季名寄.(1836).https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100300529/35?ln=ja (参照:2024/03/25

5)高味石田.俳諧季寄.(1933).

6)シエーキスピーヤ著.仁田桂次郎 (叢菊野史) .泰西奇談嵐の巻.21.盛進舎

7)ミラー 著.光栄ある生涯.(40).実業之日本社.

8)潮汐 31(12).1975-12.潮汐会.