すべての体験は、すべて俳句のためにある

 

あなたは、先輩からこのようなことを言われたことはありますか?
「さまざまな体験をしたほうがいい。それが俳句作りにも役立つから」
俳句を始めたばかりのころ、私はよく先輩たちから、このようなアドバイスをもらいました
当時は、「分かりました」とは言いながら、なんとも腑に落ちず、心にはすっと言葉が入っていかなかったように思います

過去の自分の体験が、どのように現在の俳句作りに影響を及ぼしているのかなど知りようがないし
具体的に「このように影響を及ぼしている」と証明することなど、誰もできないと思ったからです


ただ最近、このような考え方に変化が生じてきました
「今作った俳句は、過去のこの体験をしたから作れたのだ」と証明することは無理だし、そんなことを考えてもしょうがないのです

そうではなくて
「自分に起こるあらゆる体験が、自分という個性を作り上げている」という事実に注目するべきだと

自分が体験したことは、自分にしか体験することができなくて
その全ての出来事は、かならず自分の脳のどこかに蓄積しています
そのような体験が蓄積されて行って、自分の個性や価値観を作り上げているはずです


だから、これまで自分の体験してきたことの積み重ねとして、今の俳句が生み出される
これから体験していくあらゆる出来事を上積みして、明日の俳句が生み出される

そうであれば、さまざまな体験、さまざまな空間に身を置くことは、本当に必要なことではないかと思うのです
そして、どのような体験を積み重ねるべきかも、大切に感じます

優れた美術、音楽、芸術、文芸に触れること
素晴らしい作品を残した芸術家の思考を知ること、それは、きっと明日の俳句作りに良い影響を及ぼすはずです


むかし先輩の言葉の意味が分からなかった自分も、いまはこう思います
自分に起こるあらゆる体験は、すべて俳句作りに影響を及ぼすと
だから、いまの一秒も無駄にせず、さまざまな体験を全力で感受したいと