「四季を語る季語」の理念と取り組み


「四季を語る季語」は日本の四季に関連する言葉(季語ともいう)を24000語集めた本です。

本を作った理念はいくつかあるのですが、その一つに「季語を通じて子供達の情操教育に寄与すること」があります。

それについて話をします。


「ゆたかな感情」という言葉があります。単なる好き嫌いといった感情ではなく、道徳的、芸術的、宗教的価値観を含んだ感情です。

具体的には、倫理的な立場を基礎とした感情、芸術作品の背景にある宗教・文化・政治・思想などを含めた感情、物事の本質や原理に対する態度を含めた感情などです。

このような、ゆたかな感情を持った心を「情操」と言い、「情操」を育てることを目標とした教育を情操教育といいます。


情操教育は、中央教育審議会が、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の中で、目指すべき教育の方向として挙げたものです。

子供たちの豊かな心を育てることの先には、個人が社会に出たとき、社会生活を豊かに営むための知識・考え・資質が備わるようにという理念があります。

また、個人だけにとどまらず、総体として文化的な国家が発展するようにという理念があります。


情操教育の方法は色々あると思いますが、その中の一つに自然体験があります。

自然体験の積み重ねは、人間としての在り方を考えさせます。自然に感動する心は、柔らかな感性を育てます。動植物との触れ合いは、命の大切さを考えさせます。

人知を超える物事の本質を感じさせます。日本の歴史や文化を知ることから郷土愛を育て、他国を尊重する心を育てます。このように様々な心の育成効果が期待されます。


「四季を語る季語」は、日本の四季の中で見ることのできる自然の風物、生活の風物を24000語以上収録しており、それらの言葉を通じて情操教育の力添えができればと考えています。


子供たちは自然の中からさまざまな感動を享受します。このときに、触れ合う自然の名前や特徴を知っていると、そこから受ける感動が増します。

例えば、日々吹く風を私たちは一括りに「風」とだけ呼んでいますが、昔の人は微妙な違いを感じ分けて呼び分けていて、夏だけでも80種類以上の風の名前があります。

一括りにすべての風を「風」とだけ認知している場合よりも、微妙な風の違いを感じ分けられるほうが、風から受ける感動は深く大きくなります。

感動が心に沸くだけではなく、そこから「なぜ風はこんなにも違うのだろう?」「この風はなぜこの季節にしか吹かないのだろう?」と言った知的好奇心を自ら育むようになります。また、この風はどのように生まれるのだろう、という物事の本質に目を向ける心も育まれます。


植物に目を向けると、ひとつの植物でも一年を通じて様々な姿を見ることができます。

春に花を咲かせ、夏に若葉を輝かせ、秋に紅葉となり果実を結び、冬に葉を落とす。このような変化を身近に感じることは、自然の神秘さ、奥深さ、精巧さを認識させ、命の大切さや儚さを感じる心を育みます。


四季の風物は人間社会の中にもあります。

祭り、行事、家庭の中に残る風習は、何百年もの歴史があり、その根底には他者を思いやる気持ちが存在します。

祭りは地域の安泰や五穀豊穣などを祈願して行われるものですし、雛祭りは子供の成長を願って行われます。

このような風物を知り、風習が受け継がれてきた背景を知ることは、日本の歴史や文化に思いを馳せることにつながり、自身のアイデンティティを考えるきっかけになるはずです。

これらを通じて郷土愛を深めることは、他者が大切にする思想や心情に思いを傾け、他国の歴史や文化を尊敬する心につながるのではないでしょうか。


日本の四季の言葉は子供たちの心を豊かにします。

中央教育審議会の声明にあったように、それは子供たち自身の豊かな社会生活の営みにつながり、全体として文化的な国家の発展につながると信じます。



「四季を語る季語」の教育機関への無料配布

「四季を語る季語」は春・夏・秋・冬・新年版があります。

本書を通じて情操教育に寄与したいという思いと、長い日本の歴史の中で受け継がれてきた貴重な言葉を次世代に伝えたいという思いから、小中学校の教育機関に無料で本書を提供する活動を行っています。

現在は東京都の教育機関のみを対象とさせていただいています。

興味を持たれた教育機関の方がいましたら、こちらからご連絡ください。