俳句の「二物取り合わせ」は、映像の「カット割り」だと思おう

 
 
俳句の二物取り合わせが分からない、という人が多いが
俳句の二物取り合わせは、映像のカット割りと同じだと思えば分かりやすい
 
例えば次のように、2つの映像がある
 
街中で車が急ブレーキをかけた
公園の木から鳥が一斉に飛び立った
 
この二つの映像を順番に見せられると、私たちは急ブレーキの音に驚いて鳥たちが飛んだように感じる
お互いが関係しているようにも感じるし、一つの物語のようにも感じる
しかし実際は、別々に撮影した二つの映像の間には何の関係性もない
 
人間は連続した二つのことを目にすると、そこに因果関係があると感じる
良い事が起きた時も、悪いことが起きた時も、人間はそこに何か原因や因果関係を探してしまう
人間のこのような思考の癖があるからこそ、上記の映像表現が成り立つ
 
 
宙ぶらりん
誘う
教師
力なく
 
これは今、適当に思いついた単語を並べただけで、本来なら何の関係も無いはずなのに、単語を見た時点で、あなたはすでに何かストーリーのようなもの感じているのではないだろうか?
 
俳句の二物取り合わせも、これと同じだと思えば分かりやすい
二物取り合わせで、季語とは関係のない事物を置いたとしても、その2つを見た読者はそこに因果関係を探し、物語を紡いで読むのだ
俳句を作るとき、私たちはお題に関係のあるものばかりを集めがちだが、実は、わざと違うものを並べることで、読者に新しい発見を与えることができるのだ
 
 
 
車が急ブレーキを掛けた
公園の鳩が一斉に飛び立った
(何か交通事故などがあったのか、と読者は想像する)
 
平和の鐘が鳴った
公園の鳩が一斉に飛び立った
(戦争のない平和な世界を、読者は想像する)
 
手紙を読んだ
公園の鳩が一斉に飛び立った
(手紙の中に不穏な事が書かれていたのか、と読者は想像する)
 
 
どれも同じように鳩が飛び立つ映像なのに、取り合わせの映像が違うだけで
読者の感情は、それぞれに変化する
この取り合わせをうまく使えるようになれば、読者の感情を巧みに引き出すこともできるようになる
 
 
 
俳句でこのような取り合わせをするとき
お題と関係のありすぎるものを取り合わせると「近すぎる」と言われる
 
鳩が飛び立つ
平和式典が開催
(これでは当たり前すぎて「近すぎる」となる)
 
お題と関係性の見いだせないものを取り合わせると「遠すぎる」と言われる
 
鳩が飛び立つ
トビウオが飛んだ
(これでは関係性が分からなくて「遠すぎる」となる)
 
 
「近すぎず」「遠すぎず」の絶妙な距離感の取り合わせをするには、次の2点を注意しよう
取り合わせたものを、カット割りの映像のように流してみたときに
①はっと思うような映像展開がある
②ちゃんと物語になっている
この二つがクリアされていれば、「近すぎず」「遠すぎず」の場所に収まることが多い
 
 
 
今回紹介した「カット割り」の正式名称は「クロスカッティング、モンタージュ、フラッシュバック」などと呼ばれている
下記に簡単な説明を書いておく
もしあなたがドラマや映画をよく見るのであれば、この技法を注意深く観察して俳句に取り入れてみると、面白い俳句が作れるかもしれない
 

クロスカッティング

 

異なる場所で同時に起きている2つ以上のシーンを交互に見せる技法

 

例)

ヒーローが時限爆弾を探すカットと、時を刻む時計のカット

電話で会話をするカットと、アクションのカットで

犯人が自宅にいるカットと、警官が家を取り囲むカット

 

モンタージュ

 

関連性を持ったカットを複数つなげて、多くの情報を盛り込む技法

途中の時間を飛ばして、時間経過を短時間で見せることができる

場所・日にち・時間を飛ばすことで、景色の移り変わりを表現できる

 

例)

ドラマの予告

都市景観の動画クリップで都市の魅力を伝える

開花の様子を飛ばして見せる

1日の出来事・旅行・イベントなどのストーリーを自然に見せる

 

フラッシュバック

 

物語の進行中に過去の場面を組み入れる