578 俳句で使える色々な「連体形止め」

俳句をやっていると「連体形止め」という言葉を、一度は聞いたことがあると思います
俳句の最後(文末)が連体形になっているものを言います
連体形で終わらせる(俳句を止める)ことから、「連体形止め」と呼びます

ではこの「連体形止め」
いったい、どういうときに使われるのでしょうか
ここでは「連体形止め」を、どういう時に使うのかを紹介します

「連体形止め」は、「意味の強調・疑問・感慨・想像の広がり・余情・余韻」などさまざまな効果をもたらします
そのような効果を得たいときに、「連体形止め」が使われます

具体的に、それらの効果を表にまとめました


 意味の強調

文中の「ぞ・なむ」を連体形で結ぶと、意味が強調されます
「ぞ・なむ」の係助詞を、連体形で結ぶことから「係り結び」と言います


初日はめでたし(初日はめでたい)

    ↓「ぞ」を連体形の「めでたき」で結ぶ

初日めでたき(初日こそはめでたい)



 疑問・反語

文中の「や・か」を連体形で結ぶと、疑問・反語になります
「や・か」の係助詞を、連体形で結ぶことから「係り結び」と言います


彼は来ず(彼は来ない)

    ↓「や」を、連体形である「ぬ」で結ぶ

来ぬ(彼は来ないのか)


 感慨

主格の格助詞を連体形で受けて感慨を表します
格助詞には「が・の・を・に・へ・と・より・から・にて」などがあります

原に寂しき犬がありけり(~犬がいた。)

    ↓格助詞の「が」を、連体形の「ける」で受ける

原に寂しき犬ありける(~犬がいたんだ。)



 想像の広がり

連体形の後ろにつくはずの体言(名詞など)を省略して、あとは読者の想像の広がりに委ねます

人を乗せず川面を流るる小舟

     ↓

人を乗せず川面を流るる(小舟)

「小舟」が省略されていますが、「人を乗せず」と言っているので、何か舟のようなものが流れているのだろう、と想像できます
読者によっては筏(いかだ)を想像する人もいるでしょうし、カヤックが流れてきたと想像する人もいるでしょう
「小舟」と言ってしまうと、読者は一様に小舟しか想像できませんが
「小舟」を省略することで、読者はそれぞれの想像を広げることができます

明記しなくても推測が立つであろう体言を省略します

準体法とも呼ばれます



 余情

前出の体言を省略することで、余情をだします

寒紅梅不思議のごとく子の眺むる
この句だと、「眺むる(連体形)」が、前出の体言である「寒紅梅」に繋がります

言い換えると、連体形につながる名詞が隠れていると言うことです
寒紅梅不思議のごとく子の眺むる(梅)

ちなみに終止形止めだと、このようになります
寒紅梅不思議のごとく子の眺む(。)


連体形止めの方は、その先にも少し文が続く印象があります
終止形止めだとそこで文が断絶されるので、意味も淡白な感じになります


 余韻


連体形の後につながる言葉を省略して、余韻を残します
「こと」「もの」「ひと」「とき」などを省略していることが、多いようです

麦畑のいと寂しき(こと)
風に雪が流るる(とき)

文末にあるはずの言葉を省略します
本来ならば文が続くところを、突然切られることで、余韻が生まれます

「こと・もの・ひと・とき」などを省略して「を・に・が」をつけることもあります

麦畑のいと寂しき
風に雪が流るる




余韻も生まれますし、音数を調整するのにも役に立ちますね



「連体形止め」の効果を解説しましたが、念のために、注意ポイントも紹介します
俳句は、これ以上ない所まで文を省略します
省略したあげく、連体止めを使うために、その後の名詞などを更に省略すると、場合によっては意味の分からない句になることがあるので注意が必要です

それと、俳句のような短い文章では終止形で終わったほうが引き締まります


連体止めは一つの表現方法ですが、確実に効果が得られがそうだなと思ったときに使いたいものです





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