492 俳句では皆「漢字」と「ひらがな」どう使い分けてるの?



俳句を始めたばかりのころは、自分の作った俳句の中の単語を
「漢字」にするか「ひらがな」にするか、迷うことがあると思います

ここでは、皆がどのように「漢字」と「ひらがな」を使い分けているのか、例をあげながら紹介します


■「漢字」は硬い印象を与え、「ひらがな」は柔らかい印象を与えます

「漢字」と「ひらがな」の使い分けについて、明確なルールはないのですが
画数の多い漢字が続く句では、硬い印象を与えると言うことがあります
「硬い印象」というのは、ビジネス文章や報告書のような硬い文章、というような感じに受け取って貰って大丈夫です

一方で、ひらがなの多い句では、柔らかい印象を与えます

ですので
硬い内容の句を詠む場合は、漢字の分量を多くする
柔らかい内容の句を詠む場合は、ひらがなの分量を多くする
ということがあります



■詠む内容によって漢字の分量を変える

俳句の内容によって漢字とひらがなの分量を変えると言うのは、例えばこういうことです

忌日や追悼句を詠むときは、内容も少し硬いので、漢字の分量は多くします
さすがにひらがなだらけで作ったのでは、句の内容と合わなくなります
合わないどころが、相手に失礼になる場合もあるので注意が必要です

逆に、家族や友人達とのほのぼのとした出来事を詠むときは、内容も柔らかいので、ひらがなを多くしてもいいでしょう
ひらがなを多用することで、お互いの関係の柔らかさを表現できるとも言えます




■漢字だけの俳句、ひらがなだけの俳句

極端ではありますが、漢字だけ、ひらがなだけで俳句を作ったらどうなるのでしょうか
実際に漢字だけで作られた俳句と、ひらがなだけで作られた俳句を比べてみましょう

【漢字だけの俳句】
五柳先生六花七言絶句之天
山又山山桜又山桜

【ひらがなだけの俳句】
わらづかのかげにみつけしすみれかな
をりとりてはらりとおもきすすきかな

このような感じになります
「硬い印象」「柔らかい印象」というのも分かると思いますが

ぱっと見た感じ、どちらも読みにくさを感じます
(名句に向かってこんなことを言って良いのか分かりませんが・・)



■漢字だけ、ひらがなだけは読み辛い

漢字だけの俳句、ひらがなだけの俳句は
どちらも読みにくいことは分かりました

読みにくさの理由は、句切れがどこにあるのか一読して分からないからです

単語は漢字、助詞はひらがなで表記されていれば、単語同士のつながりが分かります
句中の区切りも分かります
しかし、全てが漢字、全てがひらがなだと、それらが分からなくなってしまいます

読みやすい俳句にするためには、漢字とひらがなの適度な分量が大切ということです



■漢字とひらがなの適度な分量

漢字とひらがなの適度な分量はどれくらいなのか、ですが
一般的な文章では、「 漢字:ひらがな = 3:7 」くらいの分量が読みやすいと言われています
俳句を作る時でも、この割合は一つの目安にして良いでしょう

実際に文章を比較してみましょう

【 漢字が多い 】
「明日は買い物に行くので、何処か好きな場所を決めて下さい」

【 漢字が少ない 】
「明日はショッピングにいくので、どこか好きな場所を決めてください」

同じ内容ですが、下の文章の方が読み易かったのではないでしょうか



■目立たせたい部分だけを漢字にする

俳句では、一句の中で「一番重要なもの」「主人公となるもの」だけを漢字にして
後はひらがなにしている表記方法はよく見かけます

一か所だけが漢字で表記されているため、いやでもそこが目立つことになります
部分的に目立たせたいときに有効な方法と言えるでしょう

一部だけが漢字の俳句

ありがとうからさよならまでの桜
さみだれのあまだればかり浮御堂

漢字に目が行ってしまうのではないでしょうか



■切れ目の部分は漢字にする

俳句には句読点がないので、切れ目が分かりにくいということがあります
そのため、文章によっては、2つの意味に取られてしまうことがあります

「これからはありを見つけに行く」
という文章であれば

「これからは、あり(蟻)を見つけに行く」
「これから、はあり(羽蟻)を見つけに行く」

このように、意味が2つに取れてしまうのです
これを防ぐために、句を切る部分の(前か後ろの)単語は漢字にすることが多いです
上の文章であれば、句を切る部分(句点)の前か後ろの単語、つまり蟻や羽蟻を漢字にします
そうすれば、助詞と単語の区別がつくので、誤った意味に取られることはなくなります





■読み方が同じの漢字が沢山ある時は、漢字表記にする

例えば、「さる」という漢字は、下のように複数の漢字表記があります

「猿・去る・然る・申・然有・曝」

それぞれ意味が違うのにもかかわらず、漢字で書かずに、ひらがなで「さる」と書いてしまうと
読者に正確に意味が伝わりません
小説のような長文であれば、前後の文脈で漢字が推測できるのですが、俳句では文が少ないため推測することはほとんどできません
おそらくこの漢字かな?とは思うのですが、あくまで「おそらく」でしかなくて
なぜ漢字で書いてくれなかったのだろう、と思う俳句がたくさんあります

正確に意味を伝えるためにも、同じ読み方で複数の漢字表記が存在するときは、漢字で書いた方がいいでしょう

「あわただしい(慌ただしい)」
のように、「慌ただしい」以外の漢字表記がない場合は、ひらがなでも意味は通じます


ざっと「漢字」と「ひらがな」の使い分けの例を書き出しました
他にもあるかもしれませんが、とりあえずこれらの内容を意識するだけでも
「ここは漢字で良いかも」
「ここはひらがなでも良いかも」
と分かるようになってくると思います
参考になさってください