俳句を始めたばかりのころは、自分の作った俳句の中の単語を
「漢字」にするか「ひらがな」にするか、迷うことがあると思う
ここでは、皆がどのように「漢字」と「ひらがな」を使い分けているのか、何例か紹介する
■「漢字」は硬い印象を与え、「ひらがな」は柔らかい印象を与える
「漢字」と「ひらがな」の使い分けについて、明確なルールはないのだが
画数の多い漢字が続く句では、硬い印象を与えると言うことがある
「硬い印象」というのは、ビジネス文章や報告書のような硬い文章、というような感じに近い
一方で、ひらがなの多い句では、柔らかい印象を与える
だから
硬い内容の句を詠む場合は、漢字の分量が多くなる
柔らかい内容の句を詠む場合は、ひらがなの分量が多くなる
ことがある
■詠む内容によって漢字の分量を変える
俳句の内容によって漢字とひらがなの分量が変わると言ったのは、例えばこう言うことだ
忌日や追悼句を詠むときは、内容も少し硬いので、漢字の分量は多いほうがいい
さすがにひらがなだらけで作ったのでは、句の内容と合わなくなる
合わないどころが、相手に失礼になる場合もある
逆に、家族や友人達とのほのぼのとした出来事を詠むときは、内容も柔らかいので、ひらがなを多くしてもいい
ひらがなを多用することで、お互いの関係の柔らかさを表現できるとも言える
■漢字だけの俳句、ひらがなだけの俳句
極端ではあるが、漢字だけ、ひらがなだけで俳句を作ったらどうなるのだろうか
実際に漢字だけで作られた俳句と、ひらがなだけで作られた俳句を比べてみよう
【漢字だけの俳句】
五柳先生六花七言絶句之天
山又山山桜又山桜
【ひらがなだけの俳句】
わらづかのかげにみつけしすみれかな
をりとりてはらりとおもきすすきかな
このような感じになる
「硬い印象」「柔らかい印象」というのも分かると思うが
ぱっと見た感じ、どちらも読みにくさを感じる
■漢字だけ、ひらがなだけは読み辛い
漢字だけの俳句、ひらがなだけの俳句は
どちらも読みにくい
読みにくさの理由は、句切れがどこにあるのか一読して分からないからだ
単語は漢字、助詞はひらがなで表記されていれば、単語同士のつながりが分かる
句中の区切りも分かる
しかし、全てが漢字、全てがひらがなだと、それらが分からなくなってしまう
読みやすい俳句にするためには、漢字とひらがなの適度な分量が大切ということだ
■漢字とひらがなの適度な分量
漢字とひらがなの適度な分量はどれくらいなのか、であるが
一般的な文章では、「 漢字:ひらがな = 3:7 」くらいの分量が読みやすいと言われる
俳句を作る時でも、この割合は一つの目安にして良いだろう
実際に文章を比較してみよう
【 漢字が多い 】
「明日は買い物に行くので、何処か好きな場所を決めて下さい」
【 漢字が少ない 】
「明日はショッピングにいくので、どこか好きな場所を決めてください」
同じ内容だが、下の文章の方が読み易かったのではないだろうか
■目立たせたい部分だけを漢字にする
俳句では、一句の中で「一番重要なもの」「主人公となるもの」だけを漢字にして
後はひらがなにしている表記方法はよく見かける
一か所だけが漢字で表記されているため、いやでもそこが目立つことになる
部分的に目立たせたいときに有効な方法だ
一部だけが漢字の俳句
ありがとうからさよならまでの桜
さみだれのあまだればかり浮御堂
漢字に目が行ってしまうのではないだろうか
■切れ目の部分は漢字にする
俳句では句読点がないので切れ目がわかりにくい
そのため、文章によっては意味が2つ生じてしまうことがある
「これからはありを見つけに行く」
という文章であれば
「これからは、あり(蟻)を見つけに行く」
「これから、はあり(羽蟻)を見つけに行く」
このように、意味が2つになってしまうのだ
これを防ぐために、句切れの先頭部分は漢字にすることが多い
■読み方が同じの漢字が沢山ある時は、漢字表記にする
例えば、「さる」という漢字は、下のように複数の漢字表記がある
「猿・去る・然る・申・然有・曝」
それぞれ意味が違うのにもかかわらず、漢字で書かずに、ひらがなで「さる」と書いてしまうと
読者に正確に意味が伝わらない
正確に意味を伝えるためにも、同じ読み方で複数の漢字表記が存在するときは、漢字で書いた方がいい
「あわただしい(慌ただしい)」
のように、「慌ただしい」以外の漢字表記がない場合は、ひらがなにしても意味は通じるだろう
いま、ざっと「漢字」と「ひらがな」の使い分けの例を書き出した
他にもあるかもしれないが、とりあえずこれらの内容を意識するだけでも
「ここは漢字で良いかも」
「ここはひらがなでも良いかも」
と分かるようになってくるはずだ


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