俳句を鑑賞していると、「連体止め(連体形で終わるもの)」の句をよく目にする
それなりの考えをもって「連体止め」を使っているのならいいのだが
「先輩が使っているから」「先例で使われている体言止めだから」
という理由で使うのなら、やめた方がいい
やめた方がいい理由は
「連体止め」の句の多くは、違和感があるから
違和感の良し悪しを理解しないで、先例を真似たところで失敗する確率が高い
ここでは、違和感のある連体止めを紹介する
連体止めを使っている人は、自分の句が当てはまらないか、一度確認をした方がいいかもしれない
【夕焼けの連体止め】
○○○○○ / ○○○○○○○ / 夕焼くる
「夕焼け」を連体止めにしている句はよく見かけるのだが
「夕焼け」は名詞であり、活用はしない
先例があるから皆使うのだろう
自分の使っている言葉が活用するのかしないのかを確認すれば、このような間違いはおきないはずだ
【年の暮れの連体止め】
○○○○○ / ○○○○○○○ / 年暮るる
「年の暮れ」も名詞なので、活用はしない
「暮るる」を使いたいのなら「暮るる年」にすれば良いこと
わざわざ連体止めにする必要は無い
【運ぶの連体止め】
○○○○○ / ○○○○子の荷 / 運ばるる
「運ばる(終止形)」では4音のため、「運ばるる(連体形)」で5音にしているのだろう
5音で収めたいのなら「運ばれる(終止形)」も使える
どうしても「運ばるる(連体形)」を使いたいのなら、「運ばるる子の荷」として、語順を変えれば済む話である
【滝涸るの連体止め】
○○○○○ / ○○○○○○○ / 滝涸るる
「滝涸る」では1音足りないため、「滝涸るる」にしているのだろう
涸れるのは滝なのだから、「涸るる滝」で良いはず
5音で音数を合わせたいのなら「滝涸れる」など、いくらでも方法はある
連体止めの多くの句が、字数を合わせるためだけに連体止めにしている感じを受ける
余韻や余情を意識して使っている例(成功している例)は、その中に一つもない
このような連体止めが頻繁に見られるのは
「焼くる」「暮るる」「運ばるる」「涸るる」など、上二段活用や上一段活用が最後に来るときだ
昔は、これらの言葉を使うとき、終止形は連体形に対して1音少なかった
|
終止形 |
連体形 |
昔 |
焼く 暮る 涸る |
焼くる 暮るる 涸るる |
現代は同じ音数
|
終止形 |
連体形 |
現在 |
焼ける 暮れる 涸れる |
焼ける 暮れる 涸れる |
「現在の言葉で考えて、文語風に直そうとして、結果的に現在の言葉に引きずられている」という人が多いのではないか
「焼くる」「暮るる」「涸るる」「流るる」「食ぶる」など
語尾が「る」の単語で終わる場合は、上記のような間違いをしてしまう可能性が高いので、注意した方がいい
連体止めを否定するわけではないが、ほとんどの句が間の抜けた終わり方になる
連体形の良し悪しの判断がつかない内は、使わない方が無難だ


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