403 俳句に大切な韻律(いんりつ)とは? ─音声の長さについて─


俳句の世界では、良い俳句は韻律が良いと言われます
しかし、具体的に韻律が何なのかを説明しているのは、聞いたことはありません

ここでは、韻律とは何なのか
どのようにすれば、良い韻律の句が作れるのかを、具体的に説明します



「韻律」とは、音声の高さ・強さ・長さによって作り出される言葉のリズムのことです
ですから、音声の高さ・強さ・長さなどが整っていると、韻律の良い俳句と言うことになります


ここでは、音声の高さ・強さ・長さのうちの「音声の長さ」に絞って話を進めます
「音声の長さ」は音楽で言う所のリズムに相当すると考えてください
4拍子や8拍子もリズムの一つで、人間は繰り返しのリズムに心地よさを感じます

俳句もそのリズムを用いられている訳です






音声の長さ(音楽で言う所のリズム)
次の俳句を読んでみてください
4拍子で表記してみます


♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |
ゆくはるを・・・ おうみのひとと・ をしみける・・・
行春を     近江の人と    をしみける

韻律の良い句は、一小節ごとに上五、中七、下五のそれぞれが収まっていることが多く、四拍子のリズムにも上手く乗っています
一定の音の長さ、一定の音のリズムに収まることで、読む人に心地よさを与えるのです


正調の句はこのように、長さ、リズムともに綺麗におさまっているのですが、破調の句では、うまく収まらないことが多い傾向にあります


正調の句と、破調の句を見比べてみましょう

正調の句
♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |
いくたびも・・・ ・ゆきのふかさを たずねけり・・・
幾たびも      雪の深さを   尋ねけり

♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |
とどまれば・・・ あたりにふゆる・ とんぼかな・・・
とどまれば    あたりにふゆる  蜻蛉かな

どちらも、一小節の長さ、リズムに俳句が収まっていますね



破調の句
♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ | 
あけぼのや・・・ しらうおしろきこ といっすん・・・
明ぼのや     しら魚 しろきこ と一寸

上記の句では「しろきこと」という単語が小節をまたいでいて、リズムが悪くなっています
では「しろきこと」を「しろき」「こと」にすればよいのでしょうか?

♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ | 
あけぼのや・・・ しらうおしろき・ こといっすん・・
明ぼのや     しら魚 しろき  こと一寸

こうなると、少しは良くなりましたが、リズム的には下五がだらだらした感じを受けます
また、「こと一寸」が、一つの単語のような違和感を与えます


もしかすると作者は、「しらうおしろきこと」までを中七のリズムで詠んだのかもしれません
♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ | 
あけぼのや・・・ しらうおしろきこと いっすん・・
明ぼのや     しら魚 しろきこと 一寸

このように読むと、中七で一気にスピードが増して、緩急が生まれます
最後の「一寸」が四文字の短いフレーズになってしまいますが、その短さが「一寸」にかかっているようにも思えます

芭蕉に答えを聞くことはできないので、正解は分かりません
ただ、今見たように「破調の句はどこまでが一区切りなのか」読み手を迷わせてしまうことは確かです

こうなると、「韻律が良い句だな」と読者が思うことは難しいのではないでしょうか



では、破調の句は作ってはいけないのか?と思ってしまいますが
そんなことはありません
俳句のリズムを意識できれば、破調でも、字余り・字足らずの句でも作れるようになります
また、先輩方が言う「この句のような字余りなら大丈夫」という意味も分かるようになります





次の句は、五・五・七の破調句です

♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ | 
うみくれて・・・ かものこえ・・・ ほのかにしろし・
海暮れて     鴨の声      ほのかに白し

普通に読むと、だらだらと流れる感じを受けます
ただこの句を作った作者は、次のリズムで詠んだはずです

♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ | 
うみくれて・・・ ・かものこえほの かにしろし・・・
海暮れて      鴨の声ほの   かに白し

最後の「五・七」が流れるような言葉となり、リズム感が増しました








芭蕉の字余りの句です。六・七・五

♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ | 
たびにやんで・・ ゆめはかれのを・ かけめぐる・・・
旅に病んで    夢は枯野を    かけめぐる

この句も、普通に読むと流れが悪いのですが、作者は次のリズムで詠んだはずです

♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ |♩ ♩ ♩ ♩ | 
・たびにやんで・ ・ゆめはかれのを かけめぐる・・・
旅に病んで    夢は枯野を   かけめぐる

どうでしょうか、リズムが出て、まるで句そのものが野を駆けているように感じます
上六の字余りの違和感もなくなったのでは無いでしょうか




ここで言いたいのは、リズムを意識して詠めば、破調でも、字余り・字足らずの句でも、韻律の良い句は作れると言うことです
逆に、このリズムを理解していなければ、韻律の良い破調句は作れませんし、先輩の句を鑑賞しても、どれが良い破調句で、どれが悪い破調句なのかを見分けることもできないでしょう




鑑賞するときに毎回、音符を思い浮かべる人はいませんが、無意識の中では、多くの人が上記のようなリズムを刻んで読んでいるのです
リズムの良い句は読者に、韻律の良い、心地よい句だと感じさせることができます

リズムを効果的に使えるようになると、芭蕉のように、字余りを利用してリズム感を高める、ということもできるようになります
わざわざ字数を崩して、字余り・字足らず句を作る必要はありませんが、むやみに字余り・字足らずを恐れることは無いと言うことです
これから俳句を始める方は、どんどんと新しい、韻律の良い俳句を作っていってください













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