402 俳句に大切な韻律(いんりつ)とは? ─音声の強さについて─


俳句の世界では、良い俳句は韻律が良いと言われます
しかし、具体的に韻律が何なのかを説明しているのは、聞いたことはありません



ここでは、韻律とは何なのか
どのようにすれば、良い韻律の句が作れるのかを、具体的に説明します



「韻律」とは、音声の高さ・強さ・長さによって作り出される言葉のリズムを言います
ですから、音声の高さ・強さ・長さなどが整っていると、韻律の良い俳句と言うことになります

ここでは、音声の高さ・強さ・長さのうちの「音声の強さ」に絞って話を進めます


「音声の強さ」は強弱のアクセントとも言えます
強弱のアクセントは、俳句の韻律に大きく関係しているのです



音声の強さ(強弱のアクセント)
次の俳句を読んでみてください
〇は音声の高低アクセントを表していますが
◎は強弱アクセントの“強”を示しています
 ◎〇    ◎    〇    ◎〇〇
◎  〇〇   ◎〇〇〇 〇  ◎   〇
ゆくはるを  おうみのひとと  をしみける
行春を    近江の人と   をしみける

良い俳句というのは、強弱のアクセントが五・七・五の節目にあることが多いと言えます
五・七・五の独特なリズムを、強弱のアクセントによって強調させることで、読む人に心地よさを与えて、理解のしやすさを手助けしているのです

俳句はリズムが大切だと言われますが、強弱のアクセントはリズムの一端を担っているのです





強弱のアクセントを、正調の句と、破調の句で見比べてみましょう

正調の句
 ◎〇    ◎    〇    ◎〇〇
◎  〇〇   ◎〇〇〇 〇  ◎   〇
ゆくはるを  おうみのひとと  をしみける
行春を    近江の人と    をしみける

◎       ◎〇〇      ◎〇〇
 ◎〇〇〇  ◎   〇〇〇  ◎   〇
いくたびも  ゆきのふかさを  たずねけり
幾たびも   雪の深さを    尋ねけり

 ◎〇    ◎    〇    ◎〇〇〇
◎  〇〇   ◎〇〇〇 〇  ◎
とどまれば  あたりにふゆる  とんぼかな
とどまれば  あたりにふゆる  蜻蛉かな

正調の句は、強弱アクセントの“強”が、五七五の先頭に来ています
これにより、五七五が明確に感じられます



破調の句
 ◎〇〇〇   ◎  〇      ◎
◎      ◎ 〇〇 〇〇  〇〇 ◎〇〇
あけぼのや  しらうおしろき  こといっすん
明ぼのや   しら魚しろき   こと一寸

 ◎〇〇〇   〇〇  ◎〇  〇 〇
◎      〇  〇◎     〇 〇〇
だいがくの  さびしさふゆき  のみならず
大学の    さびしさ冬木   のみならず

◎      ◎  〇 ◎     〇
 ◎〇〇〇   ◎〇 〇 ◎  〇〇 〇〇
うみくれて  かものこえほの  かにしろし
海暮れて   鴨の声ほの    かに白し



どうでしょうか?
全ての句がそうだとは言いませんが
破調の句では、五・七・五の節目ではない部分で強弱のアクセントが現れます
五・七・五のリズムが崩れている、とも言えます
これが「破調の句は韻律が悪い」と言われる一つの理由となっています



強弱アクセントを、五・七・五の節目に置くこと
それにより、五・七・五のリズム感を出て、良い韻律となって、良い俳句につながっていきます