401 俳句に大切な韻律(いんりつ)とは? ─音声の高さについて─


俳句の世界では、良い俳句は韻律が良いと言われます
しかし、具体的に韻律が何なのかを説明しているのは、聞いたことはありません



ここでは、韻律とは何なのか
どのようにすれば、良い韻律の句が作れるのかを、具体的に説明します



「韻律」とは、音声の高さ・強さ・長さによって作り出される言葉のリズムを言います
ですから、音声の高さ・強さ・長さなどが整っていると、韻律の良い俳句と言うことになります

ここでは、音声の高さ・強さ・長さのうちの「音声の高さ」に絞って話を進めます
「音声の高さ」は高低のアクセントとも言えます
高低のアクセントは、俳句の韻律に大きく関連しているのです



音声の高さ(高低のアクセント)
日本語には高低のアクセントがあります
典型的な例は次の通りです

 〇〇
 〇〇
 〇〇〇
 〇〇
シブヤ
エビス
シロガネ
タマチ




音声のアクセントには約束があります
各単語の第一音と第二音は必ず高低が入れ替わる(これによって単語が変わったことが分かります)
ひとつの単語中で、ひとたび高→低に降りたら、低→高へはもう上がらない
単語が連結すると、一語としての高低のアクセントとなる(↓ニホン+テイエン)
 
 
 〇〇〇

 
   〇〇〇
ニホン
テイエン
ニホンテイエン






このような約束を踏まえたうえで俳句をみてみましょう
良い俳句は必ずと言っていいほど、高低のアクセントの流れが、スムーズであることが多いことに気付かされます

 〇〇    〇    〇    〇〇〇
〇  〇〇   〇〇〇〇 〇  〇   〇
ゆくはるを  おうみのひとと  をしみける
行春を    近江の人と   をしみける

上記の句の「おうみの」「ひとと」「をしみけり」のそれぞれの接続部分は、繋がりがスムーズです
「おうみの」が低音で終わると、次の単語の「ひとと」は低音で始まります
「ひとと」が低音で終わると、次の単語の「をしみけり」は低音で始まります
このようにして、高低のアクセントが流れるように続いています
唯一、前の単語の終わりと、次の単語の始まりにおいて、高低のアクセントが違う部分は下の黒丸(◉)の所です

 〇〇    ◉    〇    〇〇〇
〇  〇◉   〇〇〇〇 〇  〇   〇
ゆくはるを  おうみのひとと  をしみける
行春を    近江の人と   をしみける

ただ、ここは五・七・五の節目に位置するため、高低アクセントがずれることがむしろ、軽い切れのような印象を持たせることになっています



高低のアクセントは、正調の句と、破調の句を見比べてみると、違いがよく分かります
正調の句では、高低アクセントの流れがスムーズに進みますが
破調の句では、五・七・五の節目ではない部分で高低のアクセントが現れ、流れの悪さを感じさせます



正調の句と、破調の句を見比べてみましょう
(単語が変わったところで、高低アクセントがずれる部分を黒丸(◉)で表示します)

正調の句
 〇〇    ◉    〇    〇〇〇
〇  〇◉   〇〇〇〇 〇  〇   〇
ゆくはるを  おうみのひとと  をしみける
行春を    近江の人と    をしみける

〇       〇〇〇      〇〇〇
 〇〇〇〇  〇   〇〇〇  〇   〇
いくたびも  ゆきのふかさを  たずねけり
幾たびも   雪の深さを    尋ねけり

 〇〇    ◉    〇    〇〇〇〇
〇  〇◉   〇〇〇〇 〇  〇
とどまれば  あたりにふゆる  とんぼかな
とどまれば  あたりにふゆる  蜻蛉かな



破調の句
 〇〇〇◉   〇  ◉      ◉
〇      ◉ 〇◉ 〇〇  〇◉ 〇〇〇
あけぼのや  しらうおしろき  こといっすん
明ぼのや   しら魚しろき   こと一寸

 〇〇〇◉   〇〇  〇〇  〇 ◉
〇      ◉  〇〇     ◉ 〇〇
だいがくの  さびしさふゆき  のみならず
大学の    さびしさ冬木   のみならず

〇      ◉  ◉ ◉     ◉
 〇〇〇◉   〇◉ ◉ 〇  〇◉ 〇〇
うみくれて  かものこえほの  かにしろし
海暮れて   鴨の声ほの    かに白し



どうでしょうか?
全ての句がそうだとは言いませんが
正調の句は、波の流れのように、スムーズに高低が進みますが
破調の句の多くは、五・七・五の節目ではない部分で高低のアクセントが現れたりします
これが「破調の句は韻律が悪い」と言われる一つの理由とも言えるでしょう



また、高低のアクセントのズレが頻繁に現れると、やはり韻律が悪いように感じられます


上記のことから分かることは
隣り合う単語と高低を合わせることで、韻律の良い句に近づけられるということになります
そして、抑揚をつけるために、五・七・五の節目で高低をずらす、などの方法も効果的なのではないでしょうか



俳句を作るときに、毎回、高低のアクセントを意識することは現実的では無いので、あまり意識しすぎる必要は無いと思いますが、推敲の時には是非使ってもらいたいと思います
推敲をしていると、2つの単語のどちらを前にしようか悩むときがあります

そのような時に、どちらを前にすると、高低のアクセントがスムーズにいくのか?という視点を持って決めることも一つではないでしょうか








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