353 俳句は「景色」ではなく「情景」を詠むこと



俳句の基本は「写生俳句」と言われます
しかし写生俳句が詠むのは景色だけです
そうではなくて景色と感情の「情景」を詠むことが、俳句では大切だと思います


写真や絵画などは、視覚からの美しさで見る人の感動を誘うことができます
文学にはそれをすることができません

文学でおこなえることは、その時の情景を思い起こさせることです
その時の儚さ、寂しさを感じさせることです
つまり、感情を想起させることとして、俳句は芸術の一角を担うことができるのではないでしょうか


単純に、その時の風景を思い起こさせるだけでしたら、写真や絵で済む話ですし
そもそも、写真や絵には絶対に勝てません

俳句は、その時の感情を思い起こさせることができて初めて
視覚芸術である写真や絵に増さる感動を鑑賞者に与えられるのです

俳句にはそれができる力があると、わたしは思います


「写生俳句」は俳句作りの基本です
しかし、基本だけでとどまっていてはいけません
一歩抜け出して、「情景」を詠めるように、努力したいものです