290 季語の「夕焼け」を使うときの注意点




季語の「夕焼け」を使うときの注意点です
次のような使い方は間違いですので注意しましょう


○○○○○○○○○○○○/夕焼ける
○○○○○○○○○○○○/夕焼くる
○○○○○○○○○○○○/夕焼けぬ
夕焼けて/○○○○○○○○○○○○

上記の使い方が間違いなのは、「夕焼け」が名詞だからです
名詞ですので「夕焼けて」のような助詞はつきませんし
「夕焼ける」のような活用はしません



「夕焼ける」と言った使い方は、「焼く」を活用させているのですが
そうなると意味は、「夕」が「焼けた」となってしまいます

「夕」が「焼ける」
「夕」が「焼くる」
「夕」が「焼けぬ」

どれも意味の分からなくなります



例えば「滝涸る」という季語でしたら
「滝」と「涸る」の複合単語ですので
「滝涸るる」「滝涸れぬ」というように活用しても問題はありません
しかし、「夕焼け」は「滝涸る」とは全く違います


間違った使い方をしないように、「夕焼けぬ」を使いそうになったときは
使う前にいちど、「春夕焼け」や「冬夕焼け」でも同じように使うかどうか考えてみましょう

「春夕焼けぬ」と言うかな?
「冬夕焼けぬ」と言うかな?

おそらく使いませんよね
ここで違和感を感じれば、「夕焼けぬ」を使うことも躊躇するはずです
 


「夕焼けぬ」や「夕焼ける」を使ってしまう理由は
歳時記の例句の中に、このような使い方をしている俳句が沢山あるからです
初心者のときには、歳時記に載っているのだから大丈夫なのだろうと思い使ってしまいます
私も最初はそうでした
ですが、歳時記に載っている例句には、かなりの量の文法的な間違いがあることを知っておいたほうがいいでしょう
これは、文法を勉強していけば分かるようになってきます



俳句を始めたばかりの人の中には、もしかすると
「先輩がこのように使っているのだから大丈夫」
というようにして、動詞の活用や、旧仮名遣いを真似して使ってしまう人がいるかもしれません
そのような姿勢は、すぐにやめたほうがよいでしょう


たとえ先輩といえど誤った活用を使ってしまうこともあります
先行事例があるからといって、それをそのまま真似る癖を持つと
いつかは誤った使い方をするときがきます

そして、他人の使い方を真似ていても、動詞の活用や、旧仮名遣いは決して身に付きません
必ず自分が自信を持って使えるように、勉強をすることをお勧めします