321 俳句でみられる「かに」とはなに?


■ 「かに」の意味

俳句でみられる「かに」の意味は、「・・・かのように」です





■ 「かに」を使った例句

もののふの 魂宿るかに 座禪草
「もののふ」というのは「武士」のことです
武士の魂が宿るかのように座禪草(ざぜんそう)がある、という意味です


廃屋(はいおく)を のぞき込むかに 紫木蓮(しもくれん)
廃屋をのぞき込むかのように、紫木蓮が咲いている、という意味です




■ 「かに」の仕組み

「かに」は、疑問の助詞「か」と格助詞「に」とが結合した言葉です

(係助詞)
①〔疑問〕…か
②〔反語〕…か、いや…ではない


(格助詞)
①〔場所〕…で。…に
②〔時・場合〕…に。…ときに
③〔動作や作用の帰着点〕…に




■ 「かに」はどうやって使うの?

主に「かに」を使う場合は、「かに」の前の動詞は終止形になります

動詞の終止形ですので、先ほどの例句「もののふの 魂宿るかに 座禪草」の「宿るかに」は
「宿る(終始)+ かに」というように使われています


宿ら(未然)、宿り(連用)、宿る(終始)、宿る(連体)、宿れ(已然)、宿れ(命令)

宿ら(未然)かに
宿り(連用)かに
というようには使いません




■ なぜ、このような言葉を使うの?

なぜ「かに」などという言葉を使うのかですが、これは例句を見返しながら行うと分かるでしょう


廃屋を のぞき込むかに 紫木蓮

例えば、この句を「かに」ではなくて、現代の言葉で「かのように」としたらどうなるでしょうか

廃屋を のぞき込むかのように 紫木蓮

字余りになります
字余りにならないように、違う場所を削ろうにも、削れそうな所はまったく見当たりません
この内容を崩さずに詠むためには、絶対に旧仮名でなくてはならないのです

現在の言葉と、昔の言葉の字数を比べてみると、概ね昔の言葉の字数の方が少ないと言えます
わずか17音で、言いたいことを収めるためには、この字数も重要な武器になります