275 俳句を作るときのコツ(一物仕立て)



俳句を始めたばかりの人は、必ず一度くらいは先輩方から
「初心者の内は一物仕立てを作るのはやめた方がいい」と言われると思います
一物仕立てと言うのは、ある対象物を十七音で一気に詠んでしまうことです
例えば、桜の散り方に感動をしたのなら
桜の散る様子だけに焦点を絞って俳句を詠むことです

一物仕立ては、どうしても説明句になりやすいこと
説明句にはならなくても、平凡な内容に終始してしまうことから
初心者はやらない方が良いと言われています

ただ、初心者の場合、自分が見て感動したことを俳句で表現したいため
一物仕立ての句が多くなってしまうのも事実です

ここでは、一物仕立てで俳句を作っても、説明的にならないようにする方法を紹介します
手順は2つだけです
詠みたい事物を一言でいう
もう一言、具体的な言葉を入れる

早速見ていきましょう



詠みたい事物を一言でいう

まず俳句を詠むときというのは
何かの出来事や現象などを見て、「はっ!!」としたことを詠みたいと思うはずです
その際なのですが、あなたが「はっ!!」と感じた事物を単純に一言でいってみましょう
例えば、蝉が突然鳴き出したのを聞いて、はっとしたのなら
「蝉が鳴いた」

柿が染まっているのを見て、はっとしたのなら
「柿が染まった」
というふうに言ってみるのです
これでしたら、誰でもできるはずです

この時に注意して欲しいことは
「何が、どうした」という形で言うことです
「何が、どうして、どうなった」の「どうして」を入れてしまうと説明となってしまうからです


「蝉が鳴いた」
「柿が染まった」
と言ったら、必ず「蝉が鳴いた」「柿が染まった」の形だけは崩さないようにしましょう
「何が、どうした」という形を崩さないことが
読み手にも分かりやすく伝わる一つのポイントになるからです



もう一言、具体的な言葉を入れる

ここからが重要です
上記の「蝉が鳴いた」「柿が染まった」という出来事を、俳句に仕立てるために
もう一言、付け加えます
(必ず一言だけです。二言も三言も入れてしまうと、何を言いたいのかが分からなくなります)

付け加える言葉は
そのとき、あなたの心がはっとしたことは具体的にどのようなことだったのかを
よく考えて付け加えること

つまり
具体的にどのように蝉が鳴いたのか
蝉が鳴いて、具体的にどうなったのか
ということを付け加えます

もしも、それを見た時間帯にはっとしたのなら
具体的にいつ鳴いたのか、を言葉にすればいいでしょう

それを見た場所にはっとしたのなら
具体的にどこで鳴いたのかを言葉にします


そして、その言葉を詩的な表現でできれば完成となります




例えば「蝉が鳴いた」は、次のようにしてみました
具体的に、蝉が「朝を切り裂くように」鳴いていたことに、はっとさせられたので

「油蝉朝を切り裂き鳴きいづる」
「蝉ひとつ朝を切り裂き鳴き始む」

というようにしました


具体的な言葉さえ決まれば、五七五に仕上げるのことは難しい作業ではありません
五七五の音数に文字を調整すればよいだけなので

最も難しく、そして大切なのは
「蝉が鳴く」ではなく、具体的にどのように鳴いたのか、という部分の
「朝を切り裂くように(鳴いた)」という所だけです
ここをいかにして
自分が感動したことを、的確な言葉で、かつ詩的に表現できるか、が重要です


ここの言葉を探すためには、時間をいくらでも割くべきです
具体的に、自分が感動したことは何なのかを深く考えましょう
深く深く考え抜いた末に、あなたにしか言えない、新しい表現が生まれるはずです