歳時記の中でも菊に関連する季語は、他の季語に比べてとても多く、また難解な季語の一つと言えます
ここでは、菊に関連する季語を取り上げ、それぞれの意味をまとめています
意味を理解して使い分けられるようになると、俳句の幅も広がるはずです
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■春の菊
春菊(しゅんぎく )
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三春
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キク科。鍋料理などでは冬に食すが、春に黄色の花を咲かせる。全体が黄色い花と、中心のみが黄で縁が白の花とがある。葉に細く裂け目のある芹葉春菊と、厚手の葉のおたふく春菊がある
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しんぎく
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三春
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しゅんぎくの異名
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菊菜(きくな)
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三春
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しゅんぎくの異名
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高麗菊(こうらいぎく)
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三春
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しゅんぎくの異名
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菊の根分(きくのねわけ)
菊根分(きくねわけ)
菊分つ(きくわかつ)
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仲春
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春先、菊の根を掘り起こすと
親根からいくつもの細根が分かれて芽を出すが、その芽を切り離して植える
ほかに挿木があって、これは夏に行う
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菊の若葉(きくのわかば)
菊若葉(きくわかば)
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仲春
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春になってもえ出した菊の小苗の若葉のこと
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菊の芽(きくのめ)
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仲春
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春先のびだした菊の新芽のこと
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菊の苗(きくのなえ)
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仲春
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種子から芽を出し始めた幼い菊
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東菊(あずまぎく)
吾妻菊(あずまぎく)
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晩春
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山地の草原に生え、葉はへら状で毛がある
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菊植う(きくうう)
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晩春
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キクの苗を床または鉢に植えること
キクの場合、肥料を十分に与え、床づくりに手をかける必要がある
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■夏の菊
矢車菊(やぐるまぎく)
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仲夏
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放射状に広がる花の形が矢車のように見えることから名づけられ
道端でも普通に見かけることが出来る
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菊挿す(きくさす)
挿菊(さしぎく)
菊挿芽(キクサシメ)
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仲夏
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キクのさし木をすること
梅雨の頃に水はけのよい土に挿すと、二十日ほどで発根する
ほかに根分けがあって、これは春に行う
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除虫菊(じょちゅうぎく)
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仲夏
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蚊取り線香や殺虫剤の主原料として使用されるキク
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■秋の菊
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三秋
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キク科キク属の植物
主に秋に咲き、花の色・形などにより、非常に多くの品種があり、大きさにより小菊・中菊・大菊と大別
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千代美草(ちよみぐさ)
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三秋
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キクの別称
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白菊(しらぎく、しろぎく)
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三秋
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白い花の咲く菊
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黄菊(きぎく)
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三秋
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黄色い花の菊
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一重菊(ヒトエギク)
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三秋
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菊の一種
花弁が一重
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八重菊(やえぎく)
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三秋
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菊の一種
花弁が八重
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小菊(こぎく)
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三秋
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花の小さい菊
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中菊(ちゅうぎく)
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三秋
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花が中輪の菊
江戸菊・丁字菊・嵯峨菊などがある
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大菊(おおぎく)
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三秋
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花の直径が18cm以上の菊
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菊作(きくづくり)
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三秋
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菊を栽培すること
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厚物咲(あつものざき)
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三秋
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大菊の大輪咲きが一茎に一輪をつけること
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初菊(はつぎく)
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三秋
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その年に初めて咲いた菊
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乱菊(らんぎく)
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三秋
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花弁が長くて不ぞろいな菊
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懸崖菊(けんがいぎく)
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三秋
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菊を盆栽仕立てにして、幹や茎が根よりも低く崖から垂れ下がらして作ったもの
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菊の宿(きくのやど)
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三秋
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菊の花の咲いている家
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菊の友(きくのとも)
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三秋
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菊を賞する友
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籬の菊(まがきのきく)
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三秋
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籬にある菊
籬(まがき)とは竹や柴などをあらく編んで作った垣
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菊時(きくどき)
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三秋
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菊の花の咲きどき
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菊畑(きくばたけ)
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三秋
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菊を栽培する畑
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江戸菊(えどぎく)
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三秋
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江戸を中心に流行し改良された中菊
花は内側の花弁から順々に「く」の字形に折れて花心を包むように咲く
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嵯峨菊(さがぎく)
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三秋
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直径3cmほどの花の周りに長さ10cmほどの糸のように細い管状の花弁をたくさん付ける
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伊勢菊(いせぎく)
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三秋
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伊勢地方で育成された、キクの園芸品種
嵯峨菊の変種
細長い花弁が裂けたり縮れたりして垂れ下る
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肥後菊(ひごぎく)
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三秋
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肥後地方(今の熊本県)で発達した花
一重咲きで、平弁や管弁やさじ弁と様々な花弁があり、色彩も鮮やか
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美濃菊(みのぎく)
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三秋
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美濃地方で発達した花
優雅に広がる大輪と帆立て花弁が珍しい
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丁字菊(ちょうじぎく)
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三秋
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キク科の多年草。
山地の湿地に生え、高さ30~45cm
花柄の長い黄色い頭状花を散房状につける
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一文字菊(いちもんじぎく)
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三秋
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菊の栽培品種の一つ
一重咲きで、幅の広い花びらが水平に開いて咲く
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料理菊(りょうりぎく)
食用菊(しょくようぎく)
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三秋
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食用として栽培されている菊
食用菊に同じ
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厚物咲き(あつものざき)
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三秋
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花弁が管状で、まり状に厚く盛り上がった頭花を開く大菊
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管物咲き(くだものざき)
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三秋
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細長い管弁が放射状にまっすぐ伸び、傘を広げたように咲く
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菊見(きくみ)
観菊(かんぎく)
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三秋
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菊の花を見て楽しむこと
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菊日和(きくびより)
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三秋
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菊の花が咲くころの、秋晴れのよい天気
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菊月夜(きくづきよ)
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三秋
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菊の咲いている月夜
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菊の香(きくのか)
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三秋
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菊の花の香り
特有の強い香りを持つ
野生種から大輪の花まで品種によって様々の香りを持つ
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菊人形(きくにんぎょう)
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三秋
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見世物として、菊の花で飾りつけた人形
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花の弟(はなのおとうと)
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三秋
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キクの別称
多くの花に遅れて咲くところから
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野菊(のぎく)
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仲秋
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山野に咲く菊の総称で、色はさまざまある
野紺菊(のこんぎく)
紺菊(こんぎく)
竜脳菊(りゅうのうぎく)
油菊(あぶらぎく)
泡黄金菊( あわこがねぎく)
野路菊(のじぎく)
なども野菊の一種
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野紺菊(のこんぎく)
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仲秋
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野菊の一種
葉は長楕円形で、両面に毛がある
高さ30cm~50cm
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紺菊(こんぎく)
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仲秋
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野菊の一種
ノコンギクの選別品種
紅紫色の花を咲かせる
高さ約50 cm
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竜脳菊(りゅうのうぎく)
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仲秋
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野菊の一種
竜脳に似た香りがあることから
白い花で花径3cm程度、中心部が黄色の頭状花
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油菊(あぶらぎく)
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仲秋
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野菊の一種
関西以西の山地に自生
紫黒色を帯び、葉は五つに裂けている
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泡黄金菊( あわこがねぎく)
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仲秋
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野菊の一種
九州北部の山麓のやや乾いた崖などに生える
黄色の花で花径1.5cm程度
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野路菊(のじぎく)
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仲秋
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野菊の一種
暖かい海岸地域に生える
白い花で花径3cm程度
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菊芋(きくいも)
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仲秋
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キク科ヒマワリ属の多年草
菊に似た黄色い花が咲く
食用となる地下茎が芋のようであることからこの名がついた
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菊の節句
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晩秋
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陰暦9月9日の重陽を言う
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残菊(ざんぎく)
残る菊(のこるきく)
菊残る(きくのこる)
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晩秋
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陰暦九月九日の節句以降に咲く菊
盛りを過ぎた晩秋の菊をさすこともある
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十日の菊(とおかのきく)
十日菊(とおかぎく)
後日の菊(ごにちのきく)
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晩秋
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9月9日の菊の節句の翌日に咲いた菊
菖蒲(あやめ)と同じく、時期に遅れて役に立たないものをたとえていう慣用句でもある。
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小重陽(こちょうよう)
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晩秋
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陰暦9月9日、すなわち重陽の翌日を小重陽という
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菊の宴(きくのえん)
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晩秋
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陰暦9月9日、重陽の節句の日に宮中で催された観菊の宴
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残菊の宴(ざんぎくのえん)
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晩秋
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陰暦10月5日、宮中で残菊を観賞して催された宴
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菊枕(きくまくら)
菊の枕(きくのまくら)
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晩秋
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干した菊の花を入れて作った枕
ほのかに菊の香る枕は、安眠の効用もある
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幽人枕(ゆうじんちん)
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晩秋
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重陽の節句が終わる頃、妖の世界も人の世と同じように秋の色に包まれてゆくことから
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百菊(ひゃくぎく)
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晩秋
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愛すべき菊の種類百選をいう
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晩菊(ばんぎく)
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晩秋
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晩秋に咲く菊をいう。畑などで栽培される供花などの小菊にその趣が濃い
菊は花期が長いので切られずに残れば、そのまま冬の菊となる
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菊花展(きくかてん)
菊展(きくてん)
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晩秋
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愛好家が大輪の菊や懸崖菊など芸術性の高い菊を持ち寄って、一
同に展示すること
寺社の境内で行われることが多い
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菊黄花あり(きくこうかあり)
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晩秋
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七十二候のうちの寒露三候(十月十八日~二十二日頃)のこと。
黄は黄金に通じるため古代中国では黄菊が尊重された。
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菊供養(きくくよう)
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晩秋
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十月十八日、浅草の浅草寺で行われる菊の供養をいう
境内で求めた菊の花を仏前に供え、引き換えにすでに読経供養された菊花を持ち帰る
持ち帰った菊には災難よけのご利益がある
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菊襲(きくがさね)
菊襲の衣(きくがさねのころも)
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晩秋
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襲の色目一つで表が白、裏が蘇芳色のもの
宮中の女房が着用したものは、上が蘇芳匂五枚、下に白三枚を重ねたもの
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菊酒(きくざけ)
菊の酒(きくのさけ)
菊花酒(きくかざけ)
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晩秋
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重陽の節句に菊の花を浮かべて飲む酒
菊酒を酌むことで長生きできるという言い伝えがある
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菊の着綿(きくのきせわた)
菊の綿(きくのわた)
菊の染綿(きくのそめわた)
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晩秋
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陰暦九月九日の重陽の節句の行事
夜に菊の花を綿で覆い、菊の香や菊の露が移ったその綿で体をぬぐい長寿を願う
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菊居(きくすえ)
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色綿で菊の花を作り、それを菊の枝に取りつけたもの
重陽の前夜、菊の花に被綿(きせわた)をするが、花が咲いていない場合に、色綿を丸めてつぼみにくくりつけた
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菊合(きくあわせ)
菊くらべ(きくくらべ)
菊を闘わす(きくをたたかわす)
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晩秋
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左右二組に分かれて、菊花の美しさと、その菊に添えられた歌の優劣を競い合うもの
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勝菊(かちぎく)
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菊合で勝った菊
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負菊(まけぎく)
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菊合で負けた菊
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■冬の菊
枯菊(かれぎく)
菊枯る(きくかる)
枯残る菊(かれのこるきく)
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三冬
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雨や霜、寒気にあたって枯れてしまった菊
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菊焚く(きくたく)
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三冬
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枯れてしまった菊を火に入れて燃やすこと
火に入れるとほのかな香りが立つ
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寒菊(かんぎく)
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晩冬
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きくの一品種
花は小形で黄色、晩秋から冬にかけて咲く
。
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霜菊(しもぎく)
霜見草(しもみぐさ)
雪見草(ゆきみぐさ)
秋無草(あきなしぐさ)
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晩冬
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カンギクの別称
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初見草(はつみぐさ)
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晩冬
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カンギクの別称
松、卯の花、萩なども初見草と呼ばれる
松は春、卯の花は夏、萩は秋、寒菊は冬の季節の最初に見られる植物であることから呼ばれる
このように「初見草」は様々な植物を指すため、俳句で使うことは難しい
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冬菊(ふゆぎく)
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晩冬
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通常、秋に見られる菊が遅く咲いたもの。または残り咲いて冬に見られるもの
カンギクとは違う
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■注意のしたい「菊」について
■菊とは別の花「秋明菊」について
秋明菊(しゅうめいぎく)、貴船菊(きぶねぎく) 晩秋
菊に似た白または淡紅の花を咲かせる
名前にキクが付くが、キクの仲間ではなくアネモネの仲間
野生化した植物が京都の貴船で多く見られたことから、秋明菊、貴船菊とも呼ばれる
■「菊」の名のつく鳥
菊戴(きくいただき) 晩秋
スズメ目キクイタダキ科の留鳥
日本で一番小さな鳥
頭の模様が菊の花に似ていることから呼ばれる
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