250 「菊」の季語と季節について




歳時記の中でも菊に関連する季語は、他の季語に比べてとても多く、また難解な季語の一つと言えます
ここでは、菊に関連する季語を取り上げ、それぞれの意味をまとめています
意味を理解して使い分けられるようになると、俳句の幅も広がるはずです


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■春の菊

春菊(しゅんぎく )

三春

キク科。鍋料理などでは冬に食すが、春に黄色の花を咲かせる。全体が黄色い花と、中心のみが黄で縁が白の花とがある。葉に細く裂け目のある芹葉春菊と、厚手の葉のおたふく春菊がある
しんぎく
三春
しゅんぎくの異名
菊菜(きくな)
三春
しゅんぎくの異名
高麗菊(こうらいぎく)
三春
しゅんぎくの異名
菊の根分(きくのねわけ)
菊根分(きくねわけ)
菊分つ(きくわかつ)
仲春

春先、菊の根を掘り起こすと
親根からいくつもの細根が分かれて芽を出すが、その芽を切り離して植える
ほかに挿木があって、これは夏に行う

菊の若葉(きくのわかば)
菊若葉(きくわかば)
仲春
春になってもえ出した菊の小苗の若葉のこと

菊の芽(きくのめ)
仲春
春先のびだした菊の新芽のこと
菊の苗(きくのなえ)
仲春
種子から芽を出し始めた幼い菊
東菊(あずまぎく)
吾妻菊(あずまぎく)

晩春

山地の草原に生え、葉はへら状で毛がある

菊植う(きくうう)

晩春

キクの苗を床または鉢に植えること
キクの場合、肥料を十分に与え、床づくりに手をかける必要がある





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■夏の菊



矢車菊(やぐるまぎく)

仲夏
放射状に広がる花の形が矢車のように見えることから名づけられ
道端でも普通に見かけることが出来る

菊挿す(きくさす)
挿菊(さしぎく)
菊挿芽(キクサシメ)

仲夏
キクのさし木をすること
梅雨の頃に水はけのよい土に挿すと、二十日ほどで発根する
ほかに根分けがあって、これは春に行う

除虫菊(じょちゅうぎく)

仲夏
蚊取り線香や殺虫剤の主原料として使用されるキク









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■秋の菊





三秋
キク科キク属の植物
主に秋に咲き、花の色・形などにより、非常に多くの品種があり、大きさにより小菊・中菊・大菊と大別


千代美草(ちよみぐさ)


三秋
キクの別称


白菊(しらぎく、しろぎく)


三秋
白い花の咲く菊


黄菊(きぎく)


三秋
黄色い花の菊


一重菊(ヒトエギク)


三秋
菊の一種
花弁が一重


八重菊(やえぎく)


三秋
菊の一種
花弁が八重


小菊(こぎく)


三秋
花の小さい菊


中菊(ちゅうぎく)
三秋
花が中輪の菊
江戸菊・丁字菊・嵯峨菊などがある


大菊(おおぎく)


三秋
花の直径が18cm以上の菊


菊作(きくづくり)


三秋
菊を栽培すること


厚物咲(あつものざき)


三秋
大菊の大輪咲きが一茎に一輪をつけること


初菊(はつぎく)


三秋
その年に初めて咲いた菊


乱菊(らんぎく)


三秋
花弁が長くて不ぞろいな菊


懸崖菊(けんがいぎく)


三秋
菊を盆栽仕立てにして、幹や茎が根よりも低く崖から垂れ下がらして作ったもの


菊の宿(きくのやど)


三秋
菊の花の咲いている家


菊の友(きくのとも)


三秋
菊を賞する友


籬の菊(まがきのきく)


三秋
籬にある菊
籬(まがき)とは竹や柴などをあらく編んで作った垣
菊時(きくどき)


三秋
菊の花の咲きどき


菊畑(きくばたけ)
三秋
菊を栽培する畑


江戸菊(えどぎく)


三秋
江戸を中心に流行し改良された中菊
花は内側の花弁から順々に「く」の字形に折れて花心を包むように咲く


嵯峨菊(さがぎく)


三秋
直径3cmほどの花の周りに長さ10cmほどの糸のように細い管状の花弁をたくさん付ける


伊勢菊(いせぎく)


三秋
伊勢地方で育成された、キクの園芸品種
嵯峨菊の変種
細長い花弁が裂けたり縮れたりして垂れ下る


肥後菊(ひごぎく)


三秋
肥後地方(今の熊本県)で発達した花
一重咲きで、平弁や管弁やさじ弁と様々な花弁があり、色彩も鮮やか


美濃菊(みのぎく)


三秋
美濃地方で発達した花
優雅に広がる大輪と帆立て花弁が珍しい


丁字菊(ちょうじぎく)


三秋
キク科の多年草。
山地の湿地に生え、高さ3045cm
花柄の長い黄色い頭状花を散房状につける


一文字菊(いちもんじぎく)


三秋
菊の栽培品種の一つ
一重咲きで、幅の広い花びらが水平に開いて咲く


料理菊(りょうりぎく)
食用菊(しょくようぎく)


三秋
食用として栽培されている菊
食用菊に同じ


厚物咲き(あつものざき)


三秋
花弁が管状で、まり状に厚く盛り上がった頭花を開く大菊


管物咲き(くだものざき)


三秋
細長い管弁が放射状にまっすぐ伸び、傘を広げたように咲く


菊見(きくみ)
観菊(かんぎく)


三秋
菊の花を見て楽しむこと


菊日和(きくびより)


三秋
菊の花が咲くころの、秋晴れのよい天気


菊月夜(きくづきよ)


三秋
菊の咲いている月夜


菊の香(きくのか)


三秋
菊の花の香り
特有の強い香りを持つ
野生種から大輪の花まで品種によって様々の香りを持つ


菊人形(きくにんぎょう)


三秋
見世物として、菊の花で飾りつけた人形


花の弟(はなのおとうと)


三秋
キクの別称
多くの花に遅れて咲くところから


野菊(のぎく)


仲秋
山野に咲く菊の総称で、色はさまざまある
野紺菊(のこんぎく)
紺菊(こんぎく)
竜脳菊(りゅうのうぎく)
油菊(あぶらぎく)
泡黄金菊( あわこがねぎく)
野路菊(のじぎく)
なども野菊の一種
野紺菊(のこんぎく)


仲秋
野菊の一種
葉は長楕円形で、両面に毛がある
高さ30cm50cm


紺菊(こんぎく)


仲秋
野菊の一種
ノコンギクの選別品種
紅紫色の花を咲かせる
高さ約50 cm


竜脳菊(りゅうのうぎく


仲秋
野菊の一種
竜脳に似た香りがあることから
白い花で花径3cm程度、中心部が黄色の頭状花


油菊(あぶらぎく


仲秋
野菊の一種
関西以西の山地に自生
紫黒色を帯び、葉は五つに裂けている


泡黄金菊( あわこがねぎく


仲秋
野菊の一種
九州北部の山麓のやや乾いた崖などに生える
黄色の花で花径1.5cm程度


野路菊(のじぎく)


仲秋
野菊の一種
暖かい海岸地域に生える
白い花で花径3cm程度


菊芋(きくいも)


仲秋


キク科ヒマワリ属の多年草
菊に似た黄色い花が咲く
食用となる地下茎が芋のようであることからこの名がついた


菊の節句


晩秋
陰暦9月9日の重陽を言う
残菊(ざんぎく)
残る菊(のこるきく)
菊残る(きくのこる)


晩秋
陰暦九月九日の節句以降に咲く菊
盛りを過ぎた晩秋の菊をさすこともある
十日の菊(とおかのきく)
十日菊(とおかぎく)
後日の菊(ごにちのきく)


晩秋
99日の菊の節句の翌日に咲いた菊
菖蒲(あやめ)と同じく、時期に遅れて役に立たないものをたとえていう慣用句でもある。


小重陽(こちょうよう)


晩秋
陰暦99日、すなわち重陽の翌日を小重陽という


菊の宴(きくのえん)


晩秋
陰暦99日、重陽の節句の日に宮中で催された観菊の宴


残菊の宴(ざんぎくのえん)


晩秋
陰暦105日、宮中で残菊を観賞して催された宴


菊枕(きくまくら)
菊の枕(きくのまくら)


晩秋
干した菊の花を入れて作った枕
ほのかに菊の香る枕は、安眠の効用もある
幽人枕(ゆうじんちん)


晩秋
重陽の節句が終わる頃、妖の世界も人の世と同じように秋の色に包まれてゆくことから


百菊(ひゃくぎく)


晩秋


愛すべき菊の種類百選をいう
晩菊(ばんぎく)


晩秋


晩秋に咲く菊をいう。畑などで栽培される供花などの小菊にその趣が濃い
菊は花期が長いので切られずに残れば、そのまま冬の菊となる


菊花展(きくかてん)
菊展(きくてん)


晩秋


愛好家が大輪の菊や懸崖菊など芸術性の高い菊を持ち寄って、一 同に展示すること
寺社の境内で行われることが多い


菊黄花あり(きくこうかあり)


晩秋


七十二候のうちの寒露三候(十月十八日~二十二日頃)のこと。
黄は黄金に通じるため古代中国では黄菊が尊重された。


菊供養(きくくよう)


晩秋


十月十八日、浅草の浅草寺で行われる菊の供養をいう
境内で求めた菊の花を仏前に供え、引き換えにすでに読経供養された菊花を持ち帰る
持ち帰った菊には災難よけのご利益がある
菊襲(きくがさね)
菊襲の衣(きくがさねのころも)


晩秋


襲の色目一つで表が白、裏が蘇芳色のもの
宮中の女房が着用したものは、上が蘇芳匂五枚、下に白三枚を重ねたもの


菊酒(きくざけ)
菊の酒(きくのさけ)
菊花酒(きくかざけ)


晩秋


重陽の節句に菊の花を浮かべて飲む酒
菊酒を酌むことで長生きできるという言い伝えがある



菊の着綿(きくのきせわた)
菊の綿(きくのわた)
菊の染綿(きくのそめわた)


晩秋


陰暦九月九日の重陽の節句の行事
夜に菊の花を綿で覆い、菊の香や菊の露が移ったその綿で体をぬぐい長寿を願う


菊居(きくすえ)




色綿で菊の花を作り、それを菊の枝に取りつけたもの
重陽の前夜、菊の花に被綿(きせわた)をするが、花が咲いていない場合に、色綿を丸めてつぼみにくくりつけた


菊合(きくあわせ)
菊くらべ(きくくらべ)
菊を闘わす(きくをたたかわす)


晩秋


左右二組に分かれて、菊花の美しさと、その菊に添えられた歌の優劣を競い合うもの


勝菊(かちぎく)




菊合で勝った菊


負菊(まけぎく)




菊合で負けた菊








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■冬の菊

枯菊(かれぎく)
菊枯る(きくかる)
枯残る菊(かれのこるきく)

三冬
雨や霜、寒気にあたって枯れてしまった菊

菊焚く(きくたく)

三冬
枯れてしまった菊を火に入れて燃やすこと
火に入れるとほのかな香りが立つ

寒菊(かんぎく)

晩冬
きくの一品種
花は小形で黄色、晩秋から冬にかけて咲く

霜菊(しもぎく)
霜見草(しもみぐさ)
雪見草(ゆきみぐさ)
秋無草(あきなしぐさ)
晩冬
カンギクの別称

初見草(はつみぐさ)

晩冬
カンギクの別称
松、卯の花、萩なども初見草と呼ばれる
松は春、卯の花は夏、萩は秋、寒菊は冬の季節の最初に見られる植物であることから呼ばれる
このように「初見草」は様々な植物を指すため、俳句で使うことは難しい

冬菊(ふゆぎく)

晩冬
通常、秋に見られる菊が遅く咲いたもの。または残り咲いて冬に見られるもの
カンギクとは違う




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■注意のしたい「菊」について




■菊とは別の花「秋明菊」について

秋明菊(しゅうめいぎく)、貴船菊(きぶねぎく) 晩秋
菊に似た白または淡紅の花を咲かせる
名前にキクが付くが、キクの仲間ではなくアネモネの仲間
野生化した植物が京都の貴船で多く見られたことから、秋明菊、貴船菊とも呼ばれる




■「菊」の名のつく鳥

菊戴(きくいただき) 晩秋
スズメ目キクイタダキ科の留鳥
日本で一番小さな鳥
頭の模様が菊の花に似ていることから呼ばれる



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そのほかにも、次のものは季節ごとに名前の変わる季語です

 

季語

夕立季語

雲雀季語

季語

蟷螂季語

朝顔季語

季語

季語

牡丹季語

夕焼季語