213 「百合」の季語と季節について


百合(ゆり)といえば夏の季語ですが、春にも百合の季語はあります
一口に百合と言っても様々な種類があるため、その違いが中々理解しづらいものです
ここではそれぞれの百合の違いの他、百合の見分け方などを紹介します
俳句を作る際の参考になさってください




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■夏の百合



百合(ゆり)、百合の花(ゆりのはな)
百合は夏、ラッパ形の香り高い花を咲かせる
白に紅の斑がある山百合、黄赤に紫の斑がある鬼百合、花が大砲の筒のような鉄砲百合など、原種だけでも百種以上を数える
「ゆり」の語源は「揺り」で、「百合」の字を当てるのは、ゆり根の鱗茎の重なりあうさまからきている



白百合(しらゆり)
花の白いユリ
白いユリの花



鬼百合(おにゆり)
ユリ科ユリ属の植物
草丈は1~2m程となる大型のユリ
葉は互生し、小さめの披針形で先端はゆるく尖る
茎は紫褐色で細かい斑点がある
日本では北海道から九州の平地から低山で普通に見られ、一説には中国からの渡来種と言われている



鉄砲百合(てっぽうゆり)
葉が細く、花は白を基調とするものの薄い紫色の筋が入り、花被片は6枚
外側の花被片は橙褐色になり、花は横向きだが少し下に傾くことが多い
花びらの形がラッパに似ていることに由来



笹百合(ささゆり)、山百合(やまゆり)
日本特産で日本を代表するユリである
地域によっては、ヤマユリと呼ぶこともある淡いピンク色の花を咲かせる



姫百合(ひめゆり)
数個の赤い6弁花を上向きにつける
本州南部にみられ、観賞用に栽培もされる
他のユリに比べてやや小ぶりで可憐な花姿に由来する



姫小百合(ひめさゆり)、乙女百合(おとめゆり)
新潟・福島・山形県の山地などに自生する多年草の球根植物で、日本固有種
ユリの中ではもっとも早咲き
花色は淡ピンクから濃ピンクで斑点はなく、雄しべは黄色、ほのかに甘い香りがある



車百合(くるまゆり)
葉は披針形で輪生する
6枚の花被片はオレンジ色で、濃紅色の斑点がある
花弁は強く反り返る



鹿の子百合(かのこゆり)
分布は、九州や四国
九州でもっとも自生密度が高いのが甑島列島
草丈は1〜1.5m、約10cmの花が美しく、昔から観賞用に栽培もされている
花弁に鹿の子模様の斑点があることに由来



透百合(すかしゆり)
日本特産で、中部地方北部の海岸に自生
高さ約30センチ。葉は細長い。初夏、黄赤色の花を2、3個上向きにつける
赤褐色の斑点を持つ橙色の花で、花弁の付け根付近が細く、隙間が見えることから「透かし」百合と呼ばれる




高砂百合(たかさごゆり)
台湾固有のユリ科の植物種
トランペット型の花で栽培される
葉は細く花には赤い筋が入る
香りはしない
日当たりの良い土地に生えるが、石垣にも崖地にも生える 



山百合(やまゆり)
日本特産のユリ
北陸地方を除く近畿地方以北の山地の林縁や草地に分布する
山中に生えることに由来






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■春の百合


稚児百合(ちごゆり)
日本各地から九州朝鮮にかけて広く分布する、ユリ科の多年草
林や山林、丘陵などの木の下の比較的明るいところに自生する
高さは二十センチ前後で、葉は幅二、三センチ、長さ五、六センチの長楕円形
茎の先に一つか二つの花を垂れてつける
白い可憐なユリに似た花で、二センチほどの大きさ





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■百合の見分け方


日本の百合は大きな三分類から、細かく分かれます
写真と共に特徴の違いをまとめていますので、参考になさってください
それぞれの花の違いを理解して俳句が作れるようになると、さらに俳句作りが楽しくなるはずです



オリエンタルユリ山百合
白い花びらに黄色の筋と赤い斑点
強い芳香
近畿地方以北の山地
笹百合
ピンク~白
葉の形が笹に似ている
中部地方から九州
鹿の子百合
紅、ピンク、白
鹿の子絞りの斑点模様
反り返る花形
九州
乙女百合
(姫小百合)
ピンク~白
横向きに咲く
山形、福島、新潟
アジアンテックユリ蝦夷透百合
(透かし百合)
花びらの間から向こうが見える(透ける)
北海道、中国、樺太
姫百合
朱色
小輪で。上を向いて開花。
主に西日本
黄姫百合
黄色
小輪で。上を向いて開花。
主に西日本
鬼百合
朱赤で、暗紫色の斑点がある
花びらが反り返り、下を向いて咲く
1本にたくさんの花がつく
北海道から九州
ロンギフローラムユリ鉄砲百合
純白
筒形またはラッパ形。純白の花
やさしい芳香が特徴
沖縄県・伊江島の海岸線付近
高砂百合
純白
筒形またはラッパ形
鉄砲百合と形は同じだが、葉が細めで密に生える
本州関東以南、四国、九州、沖縄



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