058 「兎」を「ウサギ」と書いてはいけないの?


俳句では「兎」を「ウサギ」とは書きません

俳句を始めて間もない時期では、難しい漢字を書くより、カタカナ表記の方が鑑賞者にも優しいのでは?と思うこともあります
例えば、「蜥蜴(とかげ)」「翡翠(かわせみ)」「水鶏(くいな)」なども少し読みずらい漢字に遭遇すると、そのように思うかもしれません

しかし、俳句では季語をカタカナ表記することはほとんどありません
その理由は、主に3つあります



生き物や植物の名前をカタカナにすると、学術用語的な意味になるから
「人」と「ヒト」を比べてみたときに
「人」は社会経済的な生活を営む人間を指します
そこには、人の権利(人権)や、人間がつくり上げた社会生活など、さまざまな情報が含まれています

一方で「ヒト」は「ヒト科」という動物の見方であり、生物学的な一分類でしかなくなります
そこには、主観的な感情や情緒はありません

梅の下に人が来て去る
    ↓
梅の下にヒトが来て去る

下の表現は、血のある人間ではなく、人間ロボットが現れて去ったようにも感じます
「兎」が「ウサギ」となっても同じです
「ウサギ」と書かれた瞬間に、兎に抱いている主観的な感情や情緒は一切消えてしまいます



通常、カタカナは外来語を表すから
パソコンや、ラジオなどは外来語ですのでカタカナで表記しますが
ウサギは外来語ではありませんので、カタカナで表記しません



使わない漢字は廃れていくから
読みづらいから、といって
「兎」「蜥蜴」「翡翠」「水鶏」といった漢字を書かなくなれば、この漢字は消えていくでしょう

多くの漢字が廃れて、カタカナ表記になった俳句
味わいを感じるでしょうか


古池や蛙飛び込む水の音
   ↓
フルイケやカワズとびこむミズのオト




まとめ

漢字 = 標準
ひらがな = 該当する漢字が無い
カタカナ = 外来語、漢字の意味・情緒を含めたくない